かつて、地球という星には、ある一人の人間がいた。

その人間の名前は...まだ、わかっていない。

こんな事を言うと、今の時代、「星の記憶を使えばわかるだろ」と言われてしまうかもしれない。

しかし、「彼女」の存在に限っては、通常の原則が当てはまらないようだ。

星の記憶を持ってしても、彼女の名前を含めほぼ全てが謎だった。

そんなことは今まで一度たりともなかった。

星の記憶は、それこそ歴史のすべてを明らかにしてきたにも関わらずである。歴史の真実を。

しかし、彼女は、この星で唯一にして最大の謎に包まれた人物だった。

通常、そんなことはありえない話なのだ。

しかし、この話をする前に、ある人物について紹介しておかないといけない。

彼女の存在に初めて気づいた人物の名前は、アルノルド・ゼン。考古学者であり、星の記憶の開発に携わったこともある人物だ。その筋では、よく見かける名前だった。

ゼンは、いくつかの彼女の噂と見られる話を聞いたことはあったが、しかし、そのどれもゼンにとっては、割とどうでもいい話だった。

確か、遥か昔に存在した日本という名前の国出身であるとか、年齢は7歳だったとか、真っ黒な髪に、真っ白な肌だったとか。

今や世界は一つに統一されていて、国という単位は過去の資料の中でしか見たことがなかったし、遥か昔の人物の見た目なんてゼンにはまるで興味がなかった。

ただ、彼女の「あれ」についての噂だけは、少しだけ興味深い話である。彼女の「あれ」に関しては、規格外だったという噂がある。

「あれ」については、当時は殆ど何もわかっておらず、人類も手探りの状態で「あれ」を発展させ、進化させることに成功したが、今はかなり解明が進んでおり、星の記憶と呼ばれている再現装置ほどのものを作り出せるまでになっていた。

ここで、そもそも「あれ」については、人によってさほど違いがあるわけではないということもわかっていて、もともとそういう仕組になっている。

だからこそ、彼女の「あれ」だけ規格外なんてことはありえないし、ゼン自身も全くの眉唾ものの噂の一つだろうと思っていた。

しかし、もし仮にそんな事がありえるのなら、それは実に興味深い話である。

一体なぜ彼女の「あれ」だけがそうなのか。どういう仕組で動いているのか。ゼンは、それを解明してみたいと強くそう感じた。

これも彼の研究者としての性なのだろうか。

とは言え、これらは、単なる噂話に過ぎず、我々研究チームはその人物について、ほとんど何の手がかりも得られていなかった。

現時点では、星の記憶を使って、その存在だけが明らかになったということだった。

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