数年前のある日、ホワイトハウスの大統領執務室では、長身で細身の男一人と小太りで短足の男一人がくつろいだ様子で向かい合って座っていた。

しかし、あたりの様子がおかしいことは誰の目にも明らかだ。

窓の外の様子も、そして、室内も、二人以外は誰もいないような感じで、何もかもがシンと静まり返っているのだ。

それもそのはず、ここは歴史的建造物の保管区域であり、20km圏内には人っ子一人いなかった。

今現在、このあたりには誰も住んでいないのだ。人の居住区は、とっくの昔に他の場所に移動している。

「おい、ゼン、そっちの様子は大丈夫か?」

机を挟んで扉の椅子に座った小男が尋ねた。

すると、大統領が座る椅子に腰掛けている背の高い男は「ああ、大丈夫みたいだ。これで行けそうだな」と答えた。

「しかし、これはすごいな。まさか、あれを使って過去に起こった出来事を寸分違わず再現、実体験できるとは...」と小男がそう言った。

「ああ、それでこそ歴史を正確に把握、検証できるというものだよ。私は、今まで書物や言い伝えはどうも胡散臭いと思っていてね」

背の高い男は、腕を組みながら物憂げな表情で返事をした。

「それにしても、まさか、君があれを見つけた創始者の一人の末裔だったとはね。非常に珍しいと言われている物質の痕跡を見つけるスペシャリストだったとか。この装置もそれの応用なんだろ?」

「ああ、星の記憶はその能力を元に作ったからね。大体同じだよ。でも規模が違う。2070年、今から500年も前の話さ。人類はコンピュータの力を使っていつどこで雨が降ったのか程度のことは再現できるようになっていた。しかし、今では、雨粒一つ一つが、いつどこでどのように落ちたのかすら再現できてしまうんだ。これってすごいことだよ。そういった過去の痕跡すら読み取って再現し、実体験できる形で再生できてしまうというのはね。この星で過去に起こった出来事を、どこで誰がどのように喋り、どのように歩いたかすらわかってしまう。装置を使って、時間と場所さえ指定すればね」

「うん、それはまあ知ってるよ。俺も開発に協力してんだから。君にはかなわないけどね」

小男はバツの悪そうな口調で指摘した。

「それで、最初に行くのは、やっぱりアメリカ初の女性大統領が捕まったあの事件にするのかい?」

小男が聞いた。

「ああ」

「なんで?」

「ん、気まぐれだけど、しいて言うなら、あの事件は歴史的に大きな転換点だったからね。あれにとっても」

「まあ、それもそうだ。じゃあ、テストも無事完了したことだし、そろそろ本番行ってみるか?」

「...ああ、それじゃあ、行こうか」

背の高い男は、背筋をぐっと背筋を伸ばして、立ち上がった。同時に、小男もそれに続いた。

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