命名できない女の子

「あの子、ずっと絵ばっかり見て、ここに来てから何にも触れないわ」

ちらちらと時計ばかりを気にしている様子のアズが、少し疲れた表情でそう言った。

「もうボブに引き継がなければならない時間よ」

「...ちょっとくらいなら遅れても構わないさ」ボブはそう言ったが、少し心配そうだった。

しかし、その後、5分が経過しても、白くてボロっちい布をまとった黒髪の女の子は、やはりその場所から微動だにしなかった。

「そろそろまずいな、時間が押してる」ボブが言った。

「...そうねえ、こういう場合は、私が決めることになってるけど...でも、こんなの始めてよ」アズは不満そうに言った。

「で、どうする?」とボブはアズに訪ねる。

「いいわ、絵を見てるなら、それで決めましょう。えーっと、あの絵は...夜の空に月が浮かんでる...だけの変な絵ね、一体誰が描いたのかしら」

ガラス越しにある遠くの絵を見て、アズは言った。

しばらくして「...月見...月見でいいわ、決まり!」と言い放った。

しかし、そんな意気揚々のアズに、ボブが注意を促した。

「いや、お前...苗字だけじゃなくて名前。名前のほうが重要だろ。苗字は、孤児たちが社会に出たときの便宜上、設定するだけで、本命はやっぱり名前だ」

ところが、アズは、「残念ながら、もう時間だわ。あとはボブ、よろしくね」と言って、子供たちを次の部屋に先導するために出ていった。

「...逃げたな」

ボブは独り言をつぶやき、急いで次の部屋に向かうのだった。

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