報告

会議室に、3人の魔法使いが呼ばれていた。呼ばれたのは、いつもと同じメンバーだ。

ここでは、秘密会議第一回で決定されたことに関する様々な報告を行うことになっている。

部屋に入ってみると、そこは、まるで裁判を受けている被告の気分だった。目の前には高い壁があり、10人もの、顔が見えない上役達がこちらを見下ろしていた。

「さて、では、例のあの子、秘匿存在であるレベル7について、現在判明していることを聞こうじゃないか」顔の見えない一人が言った。

「はあ...じゃあ、適当に、現在、ツキミ・ユイに関して、わかっていることを報告します」ユウジがやる気のなさそうな声を出した。

しかし、早速、高台の中央に座っていた一人から注意が入る。

「発言には気をつけるように、ユウジくん。それと、ここでは彼女のことは、名前ではなくレベル7と呼ぶように。トップシークレットの事情であるがゆえに」

続く決定によって、彼女は、この国の法律上、存在しないはずの魔法レベルを設定されていた。

「...レベル7について判明したことは、レベル7は、道具なしに魔法を行使することができるということです」

「は?それは...それは、一体、どういうことかね。魔法の研究でそれは否定されていたはずではないのか?」、「それは、拳銃を持たずに、銃を発泡することに等しいということではないか?」、「そ、そんなまさか...バカバカしい」重役たちは、ザワザワと慄いた声を出した。

「確かに、魔法の道具の研究は、私達が最も力を入れてきた分野です。そして、実験は、過不足なく行われたものであると、自負しております。例えば、腕に金属プレート、または、機械端末、もしくは杖と同質の材木などを埋め込み、魔法を試してみたところ、そのどれも魔法の発動には至りませんでした。理由はわかりません。しかし、仮に魔法道具を用いることなく魔法を行使するためには、あくまで自身と一体化するといえる程に、その道具と深くつながっている必要があると考えられます。しかし、例えば、生まれた頃から心臓が弱く、心臓メーターを埋め込んだ幼子を計測した結果を見ても、それは実現されませんでした。つまり、それを実現するには、人間は生まれてきたその状態で、すでに、その条件を維持している必要があると考えられます。そんなことは、現代の科学技術がいくら進歩していようとも、現時点では、不可能です。よって、魔法道具なしに、魔法を行使することはできないと、そう結論付けられているわけなのです」

「...よくわからないが。ユウジくん、君は、確か、かつて研究者だったらしいね。しかし、もう少しわかりやすく説明できんのかね」

「...つまり、なぜレベル7が生の状態で、つまり、何の道具も使うことなく、魔法を行使できるのか、我々には、全くわかりません」

「ふむ...そういえば、魔法の計測は、ボブくんが行ったのだったね。それは、正確なのかね」

ここで、ユウジは、一旦、後ろに下がって、代わりに、左側にいたボブが進み出た。

「はい、私が計測を行いました。また、レベル7に関しては、その他のほとんどの検査を自分が行いました。その結果は、限りなく正確に近いと考えております」ボブが言った。

「魔法力の計測、そして、その性質の把握、それらは、どういった形でなされるのか、説明してもらえるかな」

「まず、私が見るのは、対象のイメージです。これを気配と呼んでいます。気配には、同じものは一つとしてありません。ただし、似たものはたくさん確認されています。レベル7のそれは、普通の気配とは全く異なります。レベル7の特殊魔法は、最も小さい物質に影響を与える能力ではないかと推測しています。その根拠は、やはり、私が見たものにあります。小さな光が絶えずうごめき、そして、大きくなっていくイメージです。それがレベル7の気配でした」

「ふむ...で、それは、どのような結果をもたらすのかね?」

「結果というと?」

「つまり、最も小さい物質に影響を与えるということが、それほど脅威であるとは思えんが、それによってどんな事ができるのかと聞いている」

「それは、誤解です。レベル7が魔法を行使することで、あらゆるものを創造、ではないにしても、人間の目から見て、創造であるかのようなことが可能となります」

「あらゆるものを創造?それは...それは、どういうことかね?」

「例えば、原子を自在に操れる能力と考えてみてください。原子一つ一つを組み合わせによって、色々なものが作れますよね。いや、正確には、目に見えているもの、例えば、あそこにある照明ですが、あの照明を含むすべてのものは、いくつもの原子によって、構成されています。その原子をバラバラにすれば、あそこにある照明は消失する、いや、消失したように見える。反対に、照明の原子をすべて記録して、同じ配列に並べれば、突如、照明が創造された、現れたように見えるというわけです」

「そ、そんなことが...」

再び、部屋の中が大きなざわめきに満ちた。

「レベル7の魔法に仮に名前をつけるなら、まさに、創造魔法です。そして、レベル7が扱うのは、原子ではない」

「それはどういうことかね、まだなにかあるのか」

「レベル7は、原子よりも遥かに小さい物質に影響を与えることができる...ように見えます」

「つまり...つまり、より危険度は大きいと?」

「...はい、残念ながら」

「だとしても、それを兵器として利用できれば、世界政府に対抗するための兵器としては、これほど頼もしいものはない」、「お前たちも、世界政府が何をやっているか、ここにいる者たち全員が報告を受けているだろう」、「うむ、彼らは、貧困を蔓延させ、奴隷にして働かせたり、まして世界に散らばる宗教施設の地下には、子供たちを性奴隷として監禁する施設が隠されており、そこに何百人、何千人と収容されている。そして、一定の年齢を超えれば殺処分される。それをやめさせるには、これを使って世界政府のトップ達を殺るしかない」

「...」

「で、レベル7の様子は?」

「特に何も変化はありませんが」

「うーむ、くれぐれも扱いは慎重にな。それに、例の唯一の持ち物については?」

「ああ、サボテンですか。サボテンは生きており、現在も生きていて、彼女と一緒の部屋にありますよ」

「あれは一体何なのかね?危険はないのか?または、盗聴器、いや、盗聴魔法なんかの類は仕掛けられていないのだろうね?」

「はい、我々の最新技術、最新の魔法を駆使しましたが、あれは、ただの普通のサボテンですよ」

「ただのサボテン...なんか腑に落ちんな。なんでそんなものを...いや、待てよ。今思いついたんだが、もしかしたら、あれがレベル7の魔法道具ではないのか。その可能性は?脅威の正体が、例の女の子ではなく、実はあのサボテンだったと言うことは?」

「ありません、絶対に。そもそも生きているサボテンは、あまり魔法道具には適さない。魔法がうまく伝導、伝達されませんし...」

「...そうか。ふむ、いい考えだと思ったのだが」

ユウジとボブは、あんたらが思いつく程度のことなんて、とっくの昔にこっちで調べてるんだよと、そう思った。

「では、退廷して良いぞ」

「はあ...では失礼して」

部屋の廊下に出たユウジとボブは、歩きながら少し話をする。

「退廷って、なんか裁判みたいだったね...」ユウジが疲れた声で言った。

「あの連中、魔力1のゴミのくせして、態度だけはでかいんだよな」とボブが毒づいた。

「まあまあ、ボブ。ああいうのは、割とどこにでも居るから...。しかし、僕はユイが心配だよ」

「おいおい、あの子は危険だよ。隔離しとくのが一番だ、普通の生活をなんて、とんでもないぞ。それに関しては、俺は、議会の意見に賛成だね。アズも同じさ。反対してたのはユウジだけだぜ」

さっきまで一言も喋らなかったアズは、うんうんと頷いた。

「僕は...僕は、僕の信念のために、やることをやるだけさ...」

そんなこんなで、第一回の報告会は幕を下ろした。

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