しゃべるハリネズミ

サクラは、しゃべるハリネズミなんて、自分の夢で見た魔法界でさえ、お目にかかったことはなかった。

しかし、現実に、目の前にいるハリネズミは、関西弁で勢いよく言葉を発している。

「おい、聞いとんのか。わいは、本当に、本当に、この長旅に疲れて疲れて、疲れきっとるんや。だから、居眠りくらいしゃあないやろ、そう思わんか?」

「はいはい、そうだね」サクラは軽く流した。なんせ、このハリネズミの話の長いこと長いこと。ほんとうに長すぎるよ!

サクラは、次第に、ハリネズミが言葉をしゃべること自体、どうでも良くなっていたし、また、興味が完全に失せていた。

「おまえ、名はサクラやったか。サクラ、わいのことは、他の奴らには内緒にしとってくれへんか?あと、魔法のことも」ハリネズミが言った。

それを聞いてサクラは、びっくり仰天した。

「え、えっーー、魔法!?魔法があるの?」

「あれ、魔法のこと言ってなかったか?わいがこの姿を保ってるのも、まあ魔法によるもんやさかい、あと、わいが喋れるのもな」

「...知らないよー。で、他に魔法が使える人っているの?」

「あー、うーん、ここでは、この世界では、わいとあいつくらいやな。...ああ、あと一人忘れとった。それと、セブンくらいや」

「セブン?」

「数字のナナ。そいつは、たまたまわいと同じ名前やさかい、紛らわしくてな。わいらの間で、そいつのことはセブンって呼んどる」

「じゃあ、君の名前はなんていうの?」とサクラが聞いた。

「...笑うなや。わいは、わいは、あいつ、つまり、わいの持ち主なんやけど、あいつに、ユイって名付けられとる」ハリネズミが言った。

「ゆい、あはははっ...いや、ごめんね。でも、似合わないよね、その喋り方からして。女の子みたいな名前は」サクラは苦笑しながら言った。

「そやろ、そやろ。ただ、わいに性別はない。その辺、勘違いしたらあかんで!」ユイが言った。

「でもなあ、あいつなりに意味がある言葉なんや。あいつは、ずっと探しとった。歴史の空白ちゅうやつをな。星の記憶を見つけて、そこにも欠けた、しかし、伝説や言い伝えでは、その存在がはっきりしとるやつをずっとな。そして、最終的には、あいつは、わいの持ち主なんやけどな、とんでもないもんを作り出しよった。物質は無理やからちゅうて、思念だけやけど、それを昔に送る魔法をな。まあ、やつは天才やったからこそ、できたことなんやろうなあ。わいにはよくわからんが。そして、それはあいつの、そう、大昔の親戚かなんかに似たようなやつがおってな、そいつに上書きちゅうか、記憶に焼き付いたわけや。それからは、そいつが、あいつになった。その時、わいも一緒に実験で飛ばされたんやけどな、まあ、同じような感じやったわ。その遠い遠い世界では、わいみたいなやつは、そんな珍しいないんやで。おかしいやろ、でも、あっちでは、それが普通やった。ここが合わんちゅうんは、もしかしたら、当たり前かもしれんな、あいつにとっては。例えば、あっちでは、悪魔族、獣族、巨人族、そして、わいみたいに意思が強く人間とも意思疎通できるくらいまでには進化した植物達もいっぱいおった。多分、遺伝子的なあれで生み出されたりしたんやなあ。つまり、そういうことやサクラ」

「...いや、なんのことか、さっぱりです、ユイ...さん」サクラは、最後にそう言い付け足して、少し笑いをこらえた。

「ユイでええ。まだ、わいの名前に慣れへんのかいな。大事な話してんのに」ユイは、少し呆れた表情で言った。

「でも、わいは、お前のことは気に入った!これから少しの間、一緒にいたってええで!」ユイは、元気にそう言った

「なんか偉そう」サクラは、そう言いながらも、よろしくおねがいしますと頭を下げた。

「...その終わりのときまでな」ユイは、少し暗い表情で、ボソッとこぼしたが、しかし、声が小さすぎて、サクラには聞こえていなかった。

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