石を積み上げる

帰宅後、ハリネズミのユイにそのことを話すと、彼は、大いに喜んだ。

はじめての魔法以降、少しずつではあるが、サクラは、魔法を使えるようになっていった。

しかし、複雑なことは一切できず、また、ユイによると、魔法は万能ではないらしい。ユイがマジシャン・マジックというテレビを見ている時「あんなこと、魔法使いでもできんわ!」と文句を言っていたのを聞いている。

今は、ものを浮遊させる魔法を使って、石を積み上げる訓練をしているのだが、なかなかうまく行かなかった。何かを浮かせることがこれほど疲れるとは思っても見なかったし、それを移動させるのなんて、殆ど不可能だと思った。なぜなら、今のサクラは、杖を鋭く突きつけ、顔を真赤にしながら、なんとか小石を少しだけ宙に浮かせるのがやっとだった。

それでもサクラは、その訓練を忍耐強く続けた。

そして、長い長い訓練の末、サクラはやっと、反射的にものを浮かせられるようになっていた。しかし、それを移動するとなると、コントロールが難しすぎる。あるものは、弾丸のようにガラスを突き破って外に。あるものは、ノロノロ、ユラユラと動いたあと、ぽとりと床に落ちた。

サクラは、その間にもユイからの魔法知識を吸収していた。魔法能力よりも、むしろ知識面で、サクラは魔法について相当詳しくなっていた。それは、レベル6にも匹敵するかもしれない。もちろん、サクラはそのことに全然気づいていなかった。

「私の特殊魔法ってなんだろう?」サクラがユイに聞いた。

「何やろうな。わいにはわからんが、そういうのを直感的に把握するやつは世の中に数人おると思うで。あいつなんかは特にそうやな」ユイが答えた。

「その人の自分魔法は何だったの?」

「ああ、何や物体に残された痕跡とかを把握する能力やな。魔法も感知しよるで。そやから相手の魔法力もある程度わかるんや。離れた場所におってもモノの配置とか、気配とかわかるらしいわ」ユイが言った。

「それは...すごいね。すごすぎるよ」サクラは驚愕した。

サクラは、魔法を使えるようになって以降、どれだけ魔法が大変であるかを理解していた。

「わいが思うに、お前さん、もしや、あのウルトラレアの予知能力が来てるかもしれんで...」

「来てる?それに予知能力って何?」

「ああ、いや、あの神、カク神がそれ得意なんや」

「は?神ってどういうこと。かくしん?」

「いや、こっちの話、あはははは。何にしても予知魔法能力ちゅうんはウルトラレア、レア中のレアやで。まあ、サクラに限ってそんなことあるはずないか。でも、お前さん、夢を見るちゅうてたよな、この世界で」

「いやいや、夢くらい誰でも見るよね。でも私が見る夢は、白い女の子が突然、目を覚ます夢を見るよ。これって、なんか変だよね」

「...何かが覚醒しているのか。その白いの、おそらくユイや。そして、この世界では、人は夢を見んのや」ユイは、最後の言葉だけ小さくつぶやいた。

この世界では、人は夢を見ない...。

なんや、どういうことや。しかも、目を覚ますということは、あれの発動を予知しとるということでもある。だから、本物のサクラの特別魔法は、もしかしたら、予知魔法なのかもしれん。ハリネズミは、そんな事を考えていた。

「えっ、ユイって?ああ、もう一人のユイちゃんね。あの子がユイちゃんなんやね。あ、関西弁、感染っちゃった...」サクラがのんびり言った。

「...ああ、そう、そうやな」ユイが慌てて相槌を打つ。なにか考え事をしていた様子だった。

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