別れと再会

サクラは、幸せだった。そして、それは多分、自分が頑張ったからだった。

サクラは、ここ1年、本当に頑張っていた。

自分がここまで頑張れた理由は、その中には決してなかった。

それは外にしかなかったんだ。ハリネズミのユイちゃんは、私を助けてくれた。そして、私は、あの人達に会いたいと、いつしか心の中で、そう強く願っていた。

しかし、そんなある日、"それ"は、何の前触れもなく、突然訪れた。

地震のような地響きと、そして...空が消えていく光景。ユイにしてみれば、それは、何度も、何度も繰り返された残酷な光景だった。

小さな緑色のハリネズミは、それを見て、とても悲しそうな表情で言った。

「ああ...もう来たのか」

「早い...早すぎるっちゅうねん。そして...それは多分、サクラのおかげや...」ユイが言った。

突然の出来事にパニックになっていたサクラだったが、ユイの声だけは透き通るようによく聞こえ、その言葉に、何故か背筋が凍りついたような感覚に見舞われた。

「...」

「あのなあ、サクラ、よくお聞き。これは、この世界はなあ...本当は夢やったんや」

「魔法が実在する世界が現実で、こっちが夢なんて、逆に笑えるやろ」ユイがそう言った。

「...わからないよ。どういうことかわからない!」サクラはとっさにそう叫んでいた。

認められない、でも、なんとなくわかってしまうこの感覚。それは、私のじゃない、他の誰かのものだった。そんな気がした。

「この世界は、あるとんでもない魔力を持ったバケモンが作った世界でな、現実世界を忠実にコピーして作られとる。そいつは、ずっと、ずっと長い間、夢の中で、この世界を、世界の成り行きを見守っとった。この仮想世界でテストしとったんや。だから、ここに居るもんは、最初から居たもんは、全員、そいつの夢ん中のキャラクターやねん。サクラ、お前さんのことも...」

「わいや黒いもんは、外から、つまり、現実世界からそいつの夢ん中に秘密裏に潜入しとった。だから、この世界が終わるまでに、ここから脱出せなあかん。戻れんくなってしまうからな...だから、だからなあ、サクラとは、ここでお別れなんや...」

ユイは、悲しそうな、申し訳無さそうな表情で説明した。

そして、サクラは、ただ黙って話を聞いていた。

「うん...うん。なんとなく、なんとなくね、わかってた。私が私じゃないってこと。だって、ユイちゃんと話していても、色々と記憶とかさ、昔のこと覚えてなかったり、なんか変だなって、そう思ってたから...」サクラは話しだした。

「だから、だから、ここでお別れ...だね」

サクラは、無理に笑ってみせた。その顔には、涙がこぼれ落ちる。

そして、ユイは、自分の無力さに怒りを感じていた。

「...ああ。だけどなあ、サクラ。最後に聞いておきたいんや。お前さんは、どうしたい?」

「私は...私は、本当は消えたくない!消えたくないよ...」サクラが言った。

「それを聞けてよかった。よくお聞き。わいの能力は、ちょっと特殊でな。現実の、本物のお前さんに、今までのサクラの経験を合体、ちゅうか、融合させることができる。しかし、最後はおまえさんが決めることや。どうする、サクラ?」

「...」

サクラは、少し考えて、そして、とてもとても怖かったし、現実を受け入れられない気持ちでいっぱいだった。

しかし、サクラは、消える瞬間、少しだけ微笑み、頷いたのだった。

「ありがとう...ユイちゃん。さようなら」

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