ユウジの家

サクラは授業を受けていた。面白かった。

ただ、科学だけは未だに苦手だった。しかし、科学も重要だって言われた。なんでだろう。

今までサクラは、この学校の校長に会ったことがなかった。イトウという苗字らしい。すごい魔法使いとのことだった。しかし、校長は入学式にすら姿を現さなかった。どうやら忙しいらしい。

そんなある日、サクラは、イトウ校長に呼び出された。他の先生からそういう連絡があった。校長直々、サクラに話があるらしいという。そこで、サクラは、校長室に向かうのだった。

この広すぎる学校で、校長室はすごく、すごく遠かった。校長室に向かう道すがら、サクラは緊張しすぎて少し気分が悪くなってきた。

何の話だろう。校則違反、退学、それとも...。そんな考えがサクラの脳裏に浮かんだ。

校長室の前までやってきた。地図で見たとおりの場所にあった。しかし、その扉に「校長室」という札がなかったら、多分わからなかっただろう。

半円形で、どこかで見た研究所のような扉だった。

「コンコン」サクラは扉を叩いた。

「どうぞ」中から男の声がした。

サクラは中に入ると、そこは、研究室のような様相だ。雑多として、色々な研究道具らしきものが置いてある。ベテラン魔法使いの部屋というより、まるでコンピュータ脳科学者か何かの部屋のように見えた。

「ああ、サクラくんだね。ようこそ、はじめまして」丸メガネで黒いクシャクシャの髪の少し髭が生えた小男がそう言って握手をするために進み出た。

「あ、どうも」サクラは緊張するあまり声が出なかった。口の中がカラカラだ。

「僕は、イトウ・ユウジ。ここの校長をやっている。と言っても、ほとんど仕事なんてしてなくて、副校長に任せきりなんだけどね」ユウジが言った。

サクラはもう一度、その人の顔を見て、あることに気づいた。

「あっ!前に本屋であった!」サクラが言った。

「ああ、そうそう。会ったことがあるね。マシロ家具には行ってみたかい?丘のところにある」

「はい、いきました」

そこで買った高価な杖が全く役に立たなかったという嫌な思い出が蘇った。(と言っても、サクラの知識不足と練習不足が原因だったが)

「そうかそうか、そりゃ、よかった。で、ここに君を呼び出したのは、他でもない魔法のことでね」

「...はい、なんでしょう」

「君、僕の家に一度遊びにこないか?」

「えっ?家にですか!?なぜ...いや、よくわからないんですけど、なぜですか?」

「ああ、すまないすまない、年頃の女の子にいきなり変なことを言ってしまったね。いや、僕の家というのは、僕は、ほとんど家にいることはないんだけどね。実は、沢山の孤児だった子たちを養子にしていて、その子たちと少し話をしてほしいと思ってね。多分、刺激になると思うんだ。どうかな?」

「ああ、そういうことなら、いいですよ」サクラはそう言った。

「ありがとう。じゃあ、場所を教えるから、いつでもおいで」

サクラは、少し奇妙なお願いだと思ったが、その理由は、あとからわかった。

ユウジ校長の家は、お屋敷とも豪邸とも呼べる広い家だった。そこには、たくさんの子供達が住んでいて、この街ではこう言われていた。

「エリート学校」と。

そこは、本来、学校ではなかったし、単なる家だった。しかし、その家に行ってみると、そう呼ばれている意味がよくわかったような気がした。

その家には、ルールがあったが、ほとんどの子たちは、自由に、好き勝手にやっているようだった。学校に行ってない子も多かったが、ユウジは何も言わないらしい。ただし、その家では、週に一度、自分が得意なことで、授業をすることになっていた。いやいや、先生が来て教えるのではない。子供たちが子供たちに教え授業を考えているのだ。通常では、ありえない教育方針だった。しかし、このシステムはここでは上手く可動しているようだった。

そうやって、ここの家族は、互いに切磋琢磨し、本当にいろんなことを知っていたし、研究し、実験し、自由にやっていた。あるものは、投資に熱中し、すごい資産を築いている。あるものは、ハッカーだ。あるものは、魔法の探求をして、既にレベル4もの魔法使いだった。本当に、いろんな子がいて、なんというか...すごかった。

サクラは、ここで、同い年の伊藤 勇気(イトウ・ユウキ)という子に出会うことになる。

results matching ""

    No results matching ""