五大元素

「それにしても、お前さんはすごいわ」ハリネズミが言った。

「どうした、いきなり?」

「お前さん、火だしてたやろ。普通、魔法で五大元素の一つでも出せたら、そりゃ、すごすぎやで。あんなもん普通は出せんて」

「ああ、あれか。あれはのう、一つのトリックみたいなもんじゃよ。突然、火を作り出したわけではないのじゃ」

「な、なんや、そうなんか」

「でも、火を出すより、ものを浮かせたりするより簡単そうに思えんねんけどなあ。なんでやろ」

「ほっほっほ。君は、まだ、あれの話を完全には理解していないようじゃのう」

「あれってなんや。あ、神の話かいな。あんなもん理解できるか」

「魔法は、ここではない精神世界での出来事なのじゃよ。そう考えればわかりやすい」

「裏の世界、魂の世界っちゅうやつか?」

「そうじゃ。だから、魔法は、その者の心が生み出す。それは幻でもあり、現実でもあるのじゃ」

老人は話を続ける。

「この星の裏の核、つまり、精神世界の光のことじゃが、それは、生命、魂の集中なわけじゃ。そして、我々は、この瞬間にもそこに向かって引き寄せられ、やがて飲み込まれていくじゃろう。その時、全ては一つになるのじゃ」

「すごいわかりにくいわ。何言ってるのかさっぱりや」ハリネズミが文句を言った。

「...うむ、そうか。これは、例え話じゃが、イメージで言うと、我々は、雲から落ちていく雨粒のようなものなのじゃ」

「雨粒?」

「その下には、大海がある。そこに落ちていく雨粒なのじゃよ、我々は。雲から産まれ落ち、やがて、大海に消えていくさまは、我々の生と死に相当する。だから、人生というのは、その落ちていく瞬間の話に過ぎん」

「うーん...」

「雨粒の一つ一つは、独立しておる。個々独立したものとして認識できるのじゃ。しかし、一度、大海に落ちゆけば、その雨粒はもはや、大海と一体化し、個別の認識は不可能」

「精神世界では、我々は、今、重力に従って、落ちていく真っ最中なのじゃ。光の中へと。それが裏の世界の出来事であり、精神世界の出来事じゃ」

「裏の世界では、重力に反して飛び上がる力が心の力となる。だから、物理世界では、重力に逆らってジャンプができるように、魂の、精神世界でも同様のことができる。しかし、少し飛び上がっても、再び重力に従って地面に着地することと同じく、精神世界でも流れに逆らうことはできない。今の所、少しだけ止まったり、ちょっと飛び上がることで精一杯なのじゃ」

「そして、表の世界も裏の世界も互いにリンクしておる。それは、自分や周りに影響を与え、モノが勝手に動くのじゃよ」

「そんな馬鹿なことあるかい。例えば、石ころが勝手に動くわけ無いやろ」

「ほっほっほっ。君は魔法を信じているのか、信じていないのか。魔法とはそういうものなのじゃ。だから、ものを動かすことのほうが、自然のものである五大元素を出現させることよりも、遥かに簡単なのじゃ」

「石ころやって、自然のものやで。違うか?」

「いや、存在がはっきりしているものほど、自らがかってに動きやすいんじゃよ。逆に、実態がないものほど、その法則があまりに確定的ではっきりしておる。そういうものは、操るのが難しいんじゃよ。たぶんね」

「うーん、よくわからんけど、そういうことか。ほんま、よくわからんけどな」

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